

2025年7月31日
今回は一見すると歯科には関係がないように思える糖尿病についてのお話です。
実は糖尿病は歯周病と深い関係がある病気と言われていますが、ご存知でしたでしょうか。
実際に歯周病にかかっている人は、そうでない人よりも糖尿病にかかる割合が約2倍も高いというデータが報告されており、その深い関係が明らかになっています。
自覚症状のない人も含めると、日本では成人の約8割が歯周病にかかっていると言われています。
つまり、まだ表面化していない糖尿病予備軍も、かなりの割合で存在していると予想できます。
そして、近年の研究により、糖尿病予備軍から抜け出すために歯周病治療が一役買ってくれることが明らかになっています。
インスリンというホルモンには血糖を一定の範囲に留める働きがあるのですが、糖尿病はこのインスリンが十分に働けないために、血糖値が上昇してしまう病気です。
一方、歯周病は症状が進行すると血糖値が上がりやすくなることがわかっています。
歯周病の症状の中には歯ぐきの腫れや出血がありますが、これらを引き起こす物質にはインスリンの働きを悪くする性質があり、これが糖尿病の発症や症状の悪化へとつながってしまうのです。
以上のことから思い浮かぶのは、「歯周病を治療すれば血糖値が下がるのではないか?」という疑問です。
この真相を解き明かすために、これまでに多くの研究が行われてきました。
そしてその結果、歯周病治療が血糖コントロールや糖尿病の改善に良い影響を与えることが実証されてきました。
これらの研究結果を受け、現在では日本糖尿病学会でも、糖尿病患者さんに対して歯周病治療などのために定期的な歯科受診を推奨しています。
歯周病と糖尿病の特徴は、どちらも痛みや自覚症状がなく、知らないうちに進行することです。そのため、これら2つの病気は「沈黙の病」と呼ばれています。
そして、これら2つの病気は、どれだけ早く治療を始められるかで後の病状や重症度が大きく変わってくるため、早期発見がカギであると言えます。
糖尿病については年1回の健康診断でチェックを受ける機会はあります。
一方、歯周病についてはその状況を詳しく知る機会は余り多くありません。
お口の健康を守るため、健康診断で「血糖値」の文字を見かけた際には、ぜひこの記事の内容を思い出して、歯科医院へ足を運んでみてください。